(2019.4.17)
代表医師の中嶋です。
「脳梗塞の治療は一刻を争う」という事実は,広く知られていますが,実際に治療の開始が遅れた場合,患者さんにはどのような不利益が生じるのでしょうか。そのような疑問に一つの答えを示した論文を今回は紹介します。
掲載雑誌:Stroke(impact factor:6.239 ⇒ 脳卒中の領域では影響度の大きな雑誌です)
タイトル:Stroke Thrombolysis Save a Minute, Save a Day
著者:Meretoja A, Keshtkaran M, Saver JL, 他
掲載号数・ページ:2014;45:1053-1058
【論文内容】
研究の対象は,1998年から2011年の期間に,オーストラリアとフィンランドで血栓溶解療法を受け,その後も治療を継続している2258人である。
発症から血栓溶解療法までの時間が,患者の転帰に及ぼした影響について分析した。
結果は,血栓溶解療法の開始が1分早まるごとに健康的な生活が平均1.8日延長することが分かった。80歳の例と比較して,50歳の例では健康的な生活の延長効果は平均3.5日と高齢者よりも利益が大きかった。
また,血栓溶解療法の開始が15分遅れるごとに,障害のない自由な生活が約1か月失われることも分かった。
==============
(解説)
この論文によって,脳梗塞急性期における血栓溶解療法の治療開始が遅れることで,患者さんが受ける不利益について具体的に示されました。治療を担当する医療者側は,血栓溶解療法の遅れが持つ重大性を十分に認識し,遅滞のない治療開始を心がけるべきといえます。
Comments