(2019.8.17)
代表医師の中嶋です。
わが国では,1997年に「脳ドックのガイドライン」が作成され,2003年に改訂第2版,2008年に改訂第3版,2014年に改訂第4版が発行されました。
そして,今年2019年3月に改訂第5版の「脳ドックのガイドライン2019」(響文社,3,800円+税)が発行されました。
発行元である日本脳ドック学会は,2017年に学会の名称に,サブタイトルとして「脳卒中・認知症予防のための医学会」を付けることが理事会で提案され,その後,学会内部の委員会での答申がなされ,2018年に同提案が承認されました。
このような経緯で,現在は,「一般社団法人 日本脳ドック学会 脳卒中・認知症予防のための医学会」となり,今回発表された「脳ドックのガイドライン2019」においても,脳ドック検査における認知症検査の充実や認知機能低下への対応を追加し,さらに認知機能検査の実施を必須化し,推奨検査として「認知機能低下早期予測スコア」が加えられました。
脳ドックにおいて,「認知機能低下早期予測スコア」が推奨検査として含まれていることは,日本脳ドック学会認定施設認定の審査基準にもなっています(脳ドックのガイドライン2019,107頁)。
それでは,この「認知機能低下早期予測スコア」にはどのような項目が含まれているのでしょうか。
項目は,大きく「画像検査危険因子」「生活習慣病危険因子」「意欲,認知機能」「認知症防御因子」の4つに分けられています(詳細は「脳ドックのガイドライン2019」の108頁)。
・画像検査危険因子としては,脳梗塞,大脳白質病変,微小脳出血,頚動脈プラークの4項目を評価します。これらを評価するために,MRI検査,頚動脈エコーが必要です。
・生活習慣病危険因子としては,高血圧,糖尿病,喫煙の3項目を評価します。
・意欲,認知機能としては,意欲評価(やる気スコア),認知機能(長谷川式簡易知能評価スケール,MMSE等)を評価します。
・認知症防御因子としては,社会活動習慣(社会参加,身体的活動,知的追求等),運動習慣,教育歴,年齢を評価します。
この簡便なスコアを用いると,健常者では8点以下が90%以上を占めるといわれています。したがって,9点以上は生活習慣病治療と社会活動や運動等生活習慣の改善が必須で,脳ドックが認知症発症予防に貢献できる可能性が期待されます。
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