(2019.4.12)
代表医師の中嶋です。
アルテプラーゼ静注療法の適応は、発症時刻が明確かつ発症後4.5時間以内とされてきました。しかし、睡眠中に脳梗塞を発症し、起床時に麻痺や言語障害といった症状に気づく例は少なくありません。そのような例では、アルテプラーゼ静注療法の適応外となってしまいます。脳梗塞において、閉塞血管の再開通は、良好な機能予後につながるため、アルテプラーゼ静注療法の適応拡大が期待されてきました。しかし、発症から時間が経つほど、出血合併の危険性が高くなります。
今回は、MRIを用いて、発症早期の脳梗塞例を判別する方法を検討した論文を紹介します。
掲載雑誌:New England Journal of Medicine (impact factor:79.258 ⇒ 非常に影響度の大きい雑誌です)
タイトル:MRI-Guided Thrombolysis for Stroke with Unknown Time of Onset
著者:Thomalla G, Simonsen CZ, Boutitie F, 他
掲載号数・ページ:2018;379:611-22
論文内容:WAKE-UP trialについての報告
発症時刻不明の脳梗塞患者で、MRI上、拡散強調画像では虚血病変を表す高信号域を認めるが、FLAIRでは脳実質に高信号域を認めない例は発症から4.5時間以内の可能性が高いとされている。この条件を満たす例を対象に、MRI撮影から1時間以内かつ発見から4.5時間以内にアルテプラーゼ静注療法を開始したところ、発症90日目の予後良好例(mRS 0-1)がプラセボ投与群と比較して有意に多かった。ただし、アルテプラーゼ投与群で、症候性頭蓋内出血や3か月後の死亡が多い傾向であった。
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(解説)
この論文の意義は、これまでアルテプラーゼ静注療法の恩恵を受けることができなかった発症時刻不明の脳梗塞例でも、MRIの拡散強調画像とFLAIR画像所見のミスマッチを確認できれば、アルテプラーゼ静注療法の適応である可能性が示されたことです。
これにより、2019年3月に日本脳卒中学会から発表された静注血栓溶解(rt-PA)療法適正治療指針第三版では、第二版には記載されていなかった次のコメントが追加されています。
「発症時刻が不明な時でも、頭部MRI拡散強調画像の虚血性変化がFLAIR画像で明瞭でない場合には発症4.5時間以内の可能性が高い。このような症例に静注血栓溶解療法を行うことを、考慮しても良い(推奨グレードC1:行うことを考慮しても良いが、十分な科学的根拠がない)」
このことから、発症時刻不明の脳梗塞例では、一刻も早く、MRI検査を行い、拡散強調画像とFLAIR画像所見のミスマッチを検討することが望ましいといえます。
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