(2019.5.31)
代表医師の中嶋です。
脳梗塞の分類として,TOASTというものがあります。
TOAST分類では,脳梗塞を,アテローム血栓性脳梗塞,心原性脳塞栓症,ラクナ梗塞, 他の確定された原因による脳梗塞、そして,原因不明の脳梗塞の併せて 5 つに分類しています。
この「原因不明の脳梗塞」を表す用語として,「潜因性脳梗塞」が用いられるようになりました。
潜因性脳梗塞は,脳梗塞の16~39%を占めると報告され,その大半は「塞栓源不明脳塞栓症」と考えられています。その原因として,「潜在性心房細動」が注目されています。
仮に,心房細動が存在すれば,脳梗塞再発の危険性が高く,かつ再発したときの脳梗塞は概して重症です。脳梗塞再発の前に心房細動を診断できれば,抗凝固療法による有効な再発予防を行うことができます。
そこで,本日は,日本脳卒中学会の学会誌『脳卒中』の最新号(Vol 41, No. 3)に掲載された,潜因性脳梗塞で潜在性心房細動を検出する方法に関する論文を紹介します。
タイトル:潜因性脳梗塞例に対する植込み型心電図記録計の導入と初期使用成績
著者:土井尻遼介,木村尚人,山口枝里子ら
掲載雑誌:脳卒中 41: 159-163, 2019
この論文は,潜因性脳梗塞と診断され,埋込み型心電図記録計 Reveal LINQ(日本メドトロニック)の植込みを行った15例を対象としています。
植込み後は,遠隔モニタリングシステム「ケアリンク」を使用して,インターネットを通じてデータを確認し,発作性心房細動を認めた場合,患者に電話連絡して来院してもらい,データを取り出すという流れになります。
この論文の要点は次のとおりです。
1 植込みから1年以内に6例(40%)に発作性心房細動が検出された。
2 潜在性心房細動は,測定時間を延ばすほど検出されやすくなる。「初療室での心電図」,「入院中の心電図モニタリング/ホルター心電図」,「外来での携帯式ホルター心電図」,「植込み型心電図記録計/体外装着型記録計/外来テレメトリー」の順で,心房細動をそれぞれで新たに7.7%,5.1%,10.7%,16.9%に認め,これらを併せて23.7%の患者で潜在性心房細動を同定できる。
3 植込み型心電図記録計を植え込む前には,あらゆる診断技術の限りを尽くして,発作性心房細動の有無を突き詰める必要がある。
4 発作性心房細動の検出率は,3日以上の持続心電図モニタで20%,24時間ホルター心電図は1%であった。
5 他の報告でも,持続心電図モニタが24時間ホルター心電図よりも心房細動の検出率が高かった(65.9% vs 34.1%)と報告している。
6 植込み型心電図記録計の適応に関しては,『植込み型心電図記録計の適応となり得る潜因性脳梗塞患者の診断の手引き』(日本脳卒中学会,2016年5月)で強く推奨されている経食道心エコーを全例に行い,大動脈原性脳塞栓症,奇異性脳塞栓症を除外した症例に限定して植込みを行うことで,植込み後の発作性心房細動の検出率上昇につながる。
このように,潜因性脳梗塞に対しては,植込み型心電図記録計で潜在性心房細動を検出し,適切な抗凝固療法で脳梗塞の再発を予防するべきといえます。
Comments