(2020.3.30)
代表医師の中嶋です。
わが国では,脳血管内治療の他施設後方視的研究であるJapanese Registry of Neuroendovascular Therapy (JR-NET) が2005年から行われています。
JR-NET(2005~2006年),JR-NET2(2007~2009年)に続き,今回,JR-NET3(2010年~2014年)の結果が報告されました。
そのなかから,今回は,未破裂脳動脈瘤塞栓術の解析を報告した最新の論文を紹介します。
著者:Satow T, Ikeda G, Takahashi J, et al
タイトル:Coil embolization for unruptured intracranial aneurysms at the dawn of stent era: results of the Japanese Registry of Neuroendovascular Therapy (JR-NET) 3
掲載雑誌:Neurol Med Chir (Tokyo) 60, 55-65, 2020 (注:一般社団法人日本脳神経外科学会の学会誌です)
論文の要点は以下のとおりです。
2010年1月から2014年12月に未破裂脳動脈瘤塞栓術が行われた6,844例が登録された。
治療成績は,完全閉塞(Complete occlusion)が46.5%,動脈瘤ネックの一部残存(Residual neck)が34.3%,脳動脈瘤ドームの残存(Residual aneurysm)が19.0%,予期せぬ親動脈閉塞が0.1%であった。
補助的手段については,バルーン併用が41.0%,ステント併用が18.3%であった。
手技に関連した合併症は10.0%で認め,出血性合併症は2.2%,虚血性合併症は5.9%であった。
出血性合併症の内訳は,術中の脳動脈瘤破裂が1.3%,治療後30日以内の脳動脈瘤破裂が0.1%であった。
術後30日での後遺障害は2.8%,死亡は0.2%であった。
脳動脈瘤の大きさと合併症の関連について,虚血性合併症は,3-7 mmよりも7-25 mmで有意に発生頻度が高かった。しかし,出血性合併症は,3-7 mmと7-25 mmで発生頻度に有意差はなかった。
以上です。このように,わが国の治療成績が発信されることは,患者さんへの情報提供という点で,とても有用だと思います。
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