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執筆者の写真脳神経外科専門医 中嶋浩二

くも膜下出血の初期診療における見逃しと診断の遅れ


(2019.9.1)

代表医師の中嶋です。

本日は,くも膜下出血に関する最新の論文から,我が国における初期診療の見逃しについてわかりやすくまとめた部分の要点をご紹介します。


<論文>

片岡大治,中川俊佑,髙橋淳,髙木康志,宮本亨

くも膜下出血に対する初期治療の現状と問題点

脳神経外科ジャーナル28巻9号 542-551頁 2019年


<要点>

 過去の報告では,くも膜下出血(以下「SAH」といいます。)の初回診療における見逃しの頻度は,5~12%と報告され,見逃されたSAHは再出血などにより予後不良となる危険性が指摘されてきた。


 日本全国の脳卒中学会認定教育施設737施設を対象にしたアンケートでは,2012年4月~2014年3月の2年間に,合計579例のSAHが初期診療で見逃され,うち27%に再出血を認め,11%が死亡した。

(考察)初回診療でSAHが見逃されても,正しい診断を受けるまでに再出血する可能性は27%なので,再出血の危険性が高いとはいえません。


 579例のうち,417例(72%)は,日本脳神経外科学会や日本脳卒中学会の教育訓練施設以外の診療所や一般病院で見逃されていた。

(考察)全見逃し例のうち,28%は専門医が在籍する施設で発生していることも問題だといえます。


 579例のうち,335例(58%)では,CTやMRIなどの画像検査が行われていなかった。

(考察)症状からSAHを疑われたら,CTやMRIを行うということを広く啓蒙していく必要があるといえます。


 初診時に頭部CTが実施されたにもかかわらず,SAHと診断されなかった例は151例(26%)であった。見逃しの要因としては,SAHによる血腫がびまん性ではなく,一部のくも膜下腔に限局していることや,発症から数日経過してからのCTであったことが挙げられる。


 頭部CTによるSAHの感度は,発症24時間後では93%だが,6日後には57~85%に低下する。頭痛の初発から数日経過しているケースでは,特に慎重にCTを確認する必要がある。

(考察)CTでSAHを認めなかったとしても,SAHを完全に否定することはできないといえます。


 突然の激しい頭痛といったSAHの可能性が高い症状の場合は,CTでSAHが明らかではなくても,腰椎穿刺やMRIまで行わなければならない。腰椎穿刺は,SAHの最も鋭敏な検査法といえる。しかし,20%程度に腰椎穿刺時の外傷による血液の混入を認めるため,注意が必要である。


以上です。


これからも,弁護士の皆様の役に立つと思われる医学知識を紹介していきます。


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