(2019.4.25)
代表医師の中嶋です。
脳梗塞の臨床病型であるBranch atheromatous disease(以下BAD)は進行性脳梗塞となりやすく,運動麻痺の悪化によって転帰不良が多いといわれています。
今回は,BADについて,わが国の多施設共同研究 (J-BAD Registry) の結果をまとめた論文を紹介します。やや古い報告ですが,示唆に富んだ内容といえます。
掲載雑誌:脳卒中
タイトル:Branchatheromatous diseaseにおける進行性脳梗塞の頻度と急性期転帰
著者:星野晴彦,高木誠,山本康正, 他
掲載号数・ページ:2011; 33: 37-44
対象患者:全国8施設で2008年の1年間に,急性期MRI(拡散強調画像)で外側レンズ核線条体動脈(LSA)領域と,傍正中橋動脈(PPA)領域にそれぞれ限局する発症7日以内の急性期脳梗塞例。
除外基準:膠原病,血液疾患,動脈解離などのその他の原因に基づく脳梗塞は除外。
BADの定義:急性期MRI(拡散強調画像)でLSA領域梗塞ではMRI水平断で3スライス以上(頭部方向で20 mm以上)にわたる脳梗塞,PPA領域梗塞では,橋腹側に接する特徴的な梗塞巣を呈するもの。ただし,梗塞巣に関連する主幹動脈に50%以上の狭窄・閉塞がなく,心房細動を伴わないものとしています。
アウトカム:対象は2142例で,LSA領域梗塞は305例,PPA領域梗塞は108例であった。
そのなかで,上に示したBADの定義に合致した例は,LSA領域梗塞133例(43.6%),PPA領域梗塞55例(50.9%)でした。BADの定義に合致しなかった225例(非BAD群)の内訳は,梗塞巣は15 mm未満のラクナ梗塞が173例(76.9%)と最も多く,主幹動脈に狭窄または閉塞を認めたアテローム血栓性脳梗塞が27例(12.0%),心房細動を伴うものが13例(5.8%)でした。
治療開始後に神経症状増悪(NIHSSが1点以上増加)を認めた例は,LSA領域梗塞で,BAD群 30.1%,非BAD群 15.7%とBAD群で進行例が有意に多く(p=0.0033),同様にPPA領域梗塞で,BAD群 43.6%,非BAD群 9.4%とやはりBAD群で進行例が有意に多かった(p<0.0001)という結果でした。
退院時のmRSが0-1の転帰良好例は,LSA領域梗塞で,BAD群 40.5%,非BAD群 60.0%とBAD群で転帰は不良で(p=0.0019),同様にPPA領域梗塞で,BAD群 36.5%,非BAD群 67.6%とやはりBAD群で転帰は不良でした(p=0.0052)。
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