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執筆者の写真脳神経外科専門医 中嶋浩二

めまい診断の難しさ


 実臨床において、中枢性めまいと末梢性めまいの鑑別は容易ではありません。

 末梢性めまいと診断され、のちに小脳梗塞あるいは脳幹梗塞であることが判明してトラブルになった、というケースもあります。

 そこで今回は、めまい診断に関する興味深い最近の論文をご紹介します

中島 正之、初田 直樹、松尾 宏俊ら:初診時に末梢性めまいと診断された小脳梗塞に関する検討.脳卒中:早期公開2016年9月15日(J-STAGEでだれでも閲覧できます)

 それでは、内容の要点を挙げていきます。

■小脳梗塞は急性期脳卒中の約1.5%を占め、発症時にめまいのみを主訴とすることも稀ではない

■著者らの施設に緊急入院した小脳梗塞連続50例のうち、11例は初診時に末梢性めまいと診断されていた

■この11例は全例で初診時に頭部CT検査を実施されていたが、CT結果を後方視的に検討しても小脳梗塞の診断は1名を除いて困難であった

■この11例のうち、1名だけはMRI検査を受けていたが、MRIの拡散強調画像でも虚血巣は指摘できなかった

■この11例のうち、7例では小脳梗塞と確定診断されたときに他覚的所見として体幹失調を認めた

■初診時に小脳梗塞と診断された39名のうち、38名は初診時にMRI検査を受けていた

■めまいのみならず脳血管障害の大半は救急で受診するため、非専門医が初期診療にあたることが多い

■四肢や体幹失調の有無に注意を払い、疑わしい場合には積極的にMRI 検査の実施も考慮する必要がある

■ただし、超急性期においては MRI 撮影を行ってもなお、新鮮小脳梗塞を否定できない場合もあることを忘れてはならない

■比較的高齢で高血圧、糖尿病、脂質異常症などの危険因子を有する男性患者では特に注意が必要である

■めまい以外の神経所見に乏しい場合にも、座位の維持が可能かを確かめるなど、慎重な神経学的診察の重要性を含めて救急診療に関わる医師への啓発が必要である

 以上です。私自身も改めて勉強になりました。

 今後も弁護士の皆様にとって有用と思われる情報を発信していきたいと思います。よろしくお願いいたします。


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