(2019.4.30)
代表医師の中嶋です。
本日は平成最後の日ですが,2019年2月に「脳神経外科ジャーナル」誌で発表された論文を紹介します。
その内容は,頭部外傷について,これまでの知見をまとめたものです。
タイトル:脳神経外傷学の過去・現在・・・そして未来ー世界のtrendを見据えてー
著者:鈴木倫保,末廣栄一
掲載雑誌・ページ:脳神経外科ジャーナル 2019; 28: 72-81
以下,本論文の重要と思われる点をまとめます。
日本頭部外傷データバンク(Japan Neurotrauma Data Bank; JNTDB)のデータは,経時的なプロジェクト(P)として,P1998,P2004,P2009,P2015を比較すると,経年変化として,
①高齢化
②GCS 3-8の重症例の有意な減少
③びまん性の脳損傷の減少と占拠性病変の有意な増加
④交通事故の減少と転倒・転落事故の有意な増加
を認めます。
特にP2015では,頭部外傷例として登録された65歳以上の高齢化率は初めて半数を超え,51.7%になりました。
そして,高齢者群の31%は抗血栓療法を受けていることが判明しました。
超高齢社会となったわが国では,心房細動の有病者は100万人程度で高止まりの状態といわれ,心房細動患者の55-65%に抗凝固薬が投与されていると報告されています。
さらに抗血小板薬を加えれば,数百万人単位の高齢者が抗凝固薬や抗血小板薬といった抗血栓薬を服用していると予想されます。
抗血栓薬服用中の頭部外傷患者に対して,
①早期の医療機関受診と頭部CTなどの画像検査によるトリアージ
②異常所見があれば24時間程度の経過観察入院や抗血栓薬の中和
が勧められます。
当然,交通事故による頭部外傷患者についても,同様の対応が求められるといえます。
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