top of page
執筆者の写真脳神経外科専門医 中嶋浩二

おすすめの書籍 ~高次脳機能障害~





(2020.6.7)

代表医師の中嶋です。

今回は,本のご紹介です。


交通事故の後遺障害で,高次脳機能障害は,私たち医師にとっても,評価,診断,治療が難しい病態です。


私自身も,月に数件,脳外傷による高次脳機能障害の鑑定に取り組んでいますが,簡単だと感じた例は一例もありません。


それでも,多くの鑑定をご依頼くださる弁護士の方々や,その期待に応えようと,日々の勉強を積み重ねてきたおかげで,少しずつ,理解が深まってきたと感じています。


そこで,今回は,私が鑑定の際,頻繁に参照している文献(書籍)について,簡単な書評とともにご紹介したいと思います。



基礎固めに役立つ書籍


■『高次脳機能障害の症候辞典』 医歯薬出版,2009年発行(定価2,500円+税)

 河村満,高橋伸佳著


書評)高次脳機能障害の案件では,弁護士の皆様にとって,難解な医学用語に直面するかと思います。

記憶障害と記銘力障害ってどう違うの?作業記憶って?

まずは,用語の意味をしっかり押さえることが,病態を理解する上で最も重要です。

この本では,高次脳機能障害に関連した医学用語の意味を,簡単にわかりやすく説明しています。


■『高次脳機能障害ポケットマニュアル第3版』 医歯薬出版,2015年発行(定価2,100円+税)

 原寛美監修


書評全体像を手っ取り早く知ることができます。短時間で通読できる分量なので,まずは入門書としてざっと目を通してみるのをお勧めします。


■『頭部外傷治療・管理のガイドライン第4版』 医学書院,2019年発行(定価3,000円+税)

 日本脳神経外科学会・日本脳神経外傷学会監修

 頭部外傷治療・管理のガイドライン作成委員会編集


書評)今回のガイドライン改訂では,高次脳機能障害関連の指針も示されています。ガイドラインなので,当然ですが,エビデンスレベルを意識した内容となっています。



知識を深める専門的な書籍


■『頭部外傷と高次脳機能障害』 新興医学出版社,2018年発行(定価4,600円+税)

 日本高次脳機能障害学会教育・研修委員会編


書評)2015年に学会が医療者向けに開催したセミナーの内容をまとめたものです。この分野の専門家が詳しく解説しています。この本でしか示されていない知見も見受けられ,鑑定でも役に立つ充実した内容ですが,読み進めるには,基礎的な医学知識が必要です。


■『機能解剖 高次脳機能障害』 ニューロエビデンス社,2017年第2版発行(定価7,500円+税)

 丸石正治著


書評)脳局所の機能について,とても詳しく書かれています。その部位が障害されると,どのような症状が出現するのか,といった点まで踏み込んでいるので,症状と画像所見の整合性を判断する上で有用です。ただ,内容を理解するには,脳の解剖に関する知識が必須となります。


■『日本版WAIS-III 理論マニュアル,実施・採点マニュアル』 日本文化科学社,2006年発行(2冊セット,定価12,000円+税)

 日本版WAIS-III刊行委員会 訳編


書評)自賠認定でも重視されているWAIS-IIIの結果を深く理解するためには,このマニュアル,特に理論マニュアルは欠かせません。

脳外傷による高次脳機能障害の後遺障害認定において,神経心理学的検査の結果は,画像所見や意識障害の程度と比較して,補助的な所見といった印象を受けます。

しかし,神経心理学的検査の結果をきちんと説明できれば,障害の存在と程度に関する主張を補強できるので,特にWAIS-IIIの結果の解釈は重要です。

内容は正直なところ,非常に難解です。しかし,じっくりと読み込んで理解した本書の知識は,必ず役に立つときがくると思います。

なお,購入する際は,書店ではなく,出版社のサイトから直接購入となります。

図書館に所蔵されている場合もあるので,探してみるとよいです。



その他 脳神経外科の成書


■『脳神経外科学 改訂12版』 金芳堂,2016年発行(定価34,000円+税)

 太田富雄総編集


書評)わが国で最も内容が充実した脳神経外科学の成書です。三分冊で総ページ数は2960頁です。

これから専門医試験を受ける専攻医にとっては必須の書ですが,専門医にとっても知識の拠り所として広く活用されています。

高価ですが,それだけの価値は十分あるといえます。ただ,そろそろ改訂の時期かもしれませんので,購入の際はご注意ください。


■『ニューススタンダード脳神経外科学 第4版』 三輪書店,2017年発行(定価7,000円+税)

 生塩之敬,種子田護,山田和雄編集


書評)医学生向けの教科書なので,とても読みやすく要点をまとめられています。

まずはこちらの教科書で基礎知識をつけておくことで,他の文献も理解が進むと思います。


以上です。ほかにも,高次脳機能障害の役に立つ書籍はいくつもありますが,今回はそのなかでも重要なものだけをご紹介しました。

これからも,弁護士の皆様の役に立つと思われる情報をお伝えしていきます。

ご意見・ご質問は,本サイトのお問い合わせフォームよりお寄せ下さい。


Commentaires


bottom of page