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執筆者の写真脳神経外科専門医 中嶋浩二

脳外傷による高次脳機能障害の裁判例を脳外科専門医の視点で考察する(1)~明らかとなった裁判所の基本姿勢~

(2020.7.6)


代表医師の中嶋です。

今回は,脳外傷による高次脳機能障害に対する裁判所の基本姿勢について,お話したいと思います。

これまで,私は,交通事故に起因する脳外傷による高次脳機能障害の医学鑑定に関するご相談を数多くお受けしてきました。

鑑定の流れとしては,まず,後遺障害に該当する高次脳機能障害が存在するといえるのか,そして,高次脳機能障害が存在するといえる場合,後遺障害等級は何級に相当するのか,といった点を調査し,簡単な理由を添えて結論をお伝えしています。

この調査は,スクリーニング,つまり簡易鑑定として捉え,数多くご依頼をお受けしているからこそ実現可能だと思っています。

医学鑑定とはいえ,求められている結論は,後遺障害の有無と後遺障害等級の妥当性なので,損害賠償実務も知っておく必要があります。


なぜなら,最終的には,裁判となったときに,依頼者の主張が認容されうるのか,医学的な視点だけではなく,裁判所がどのように判断するのかを推測することが求められているからです。

そこで,私は,交通事故の後遺障害として,高次脳機能障害の存否や後遺障害等級が争われた最近の損害賠償事件について,時間があれば,その判決文に目を通すようにしています。

そのなかで,今回は,高次脳機能障害の認定に対する裁判所の基本姿勢を表す一文に遭遇したのでご紹介したいと思います。

<神戸地裁伊丹支部 令和元年5月30日判決>

事故の概要は,横断歩道を徒歩で横断中の被害者に,加害者の普通貨物自動車が衝突し,脳挫傷,急性硬膜下血腫,外傷性くも膜下出血等の傷害を負わせたというものです。

被害者は,事故後,もの忘れ,注意力低下等を認め,脳挫傷に起因する高次脳機能障害として,自賠責の認定は7級4号でした。これに対し,加害者側は,7級の認定について,不当に重すぎるとして,12級を主張しました。

裁判所は,後遺障害に対する判断の冒頭で,次のように述べています。

「・・・原告は,自賠責保険(共済)審査会高次脳機能障害専門部会の審議に基づき,原告の物忘れ,注意力低下等の症状は後遺障害等級7級4号に該当するとの認定を受けており,他に特段の事情がない限り,複数の専門家による上記判断を尊重し,そのとおりの後遺障害を認定するのが相当である。


このことから,裁判所の判断は,自賠責の認定が正しいことを前提にスタートしていることが明らかです。ところが,裁判所は,自賠責の認定を尊重すべきとしながらも,この事件では,結局,自賠責の認定について,被害者の復職後における「業務遂行の現状を的確に反映していないきらい」があるとして,自賠責の認定よりも軽い9級10号程度との判断を示しています。

以上のように,裁判所の判断は,基本的に自賠責の認定を尊重しているとしながらも,特段の事情があれば,自賠責の認定よりも低い等級と判断しうることが明らかとなりました。ただ,上記事件での業務遂行の現状が,自賠責認定の変更を許容しうるほどの特段の事情なのかは疑問です。

次回は,令和に入ってからの裁判例で,裁判所が自賠責の認定どおりの判断をしているのか否かをご紹介したいと思います。

(ちょっと一休み)

最近,コーヒーミルを立て続けに2つ購入しました。

数年前から,コーヒーにこだわるようになり,以前はインスタントコーヒーで満足していたのですが,ドリップコーヒーを経て,いまでは,豆で購入して,一杯ずつ挽いて淹れる喜びに浸っております。

さて,コーヒーミルですが,じつは,1号機として購入したのは手動のものでした。

当初は,自分でハンドルを握り,ガリガリと挽く感触を楽しんでしました。

しかも,深煎りの豆はやわらかく,浅煎りの豆は硬いという新たな発見もありました。

しかし,仕事が立て込んだときや,病院での当直勤務明けなど,疲労困憊のときに,ガリガリと挽くことが,苦痛に感じるようになってしまい,ある日,挽き終わった後の右前腕の疲労を感じながら,愛しの1号機をしばし見つめたあと,電動のミルを2号機として迎えるべく,通販で「購入する」ボタンをポチっとしたのでした。

そして,手元に届いた2号機,電動ミル。その破壊力たるや,驚きを通り過ぎて,恐怖を感じるほどです。コーヒー1杯分の豆が,わずか5秒で木っ端みじんです。正直,あまりにも電光石火で,最適な挽き具合を調整することも至難の業です。

厳選したお気に入りの豆を所定の場所へ投入し,ミルを作動させるボタンを押す指に全神経を集中させ,「ガガガガガーーーーー,パッ」とボタンから指を離すタイミングにいまだ試行錯誤の日々です。

そして,ガリガリと手回ししていたときのほうが,不思議とおいしく感じるのは,やはり気のせいでしょうか。(中嶋)


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